カンボジア道中記3
第1話「ボス登場」
<2015年9月6日(日)深夜~羽田出発>
8月後半からの長雨で、突然終わってしまったかのような今年の夏。
雨は9月に入ってからも降り続き、今夜も車のワイパーが追いつかないほど激しい豪雨が車窓を叩きつけていた。
前回の5月末の訪問から約3ヶ月、我々は再びカンボジアを訪れるべく、それぞれの仕事を片付けて大雨の降りしきるなか空港へと急いでいた。
事務局メンバー 増田博道(以下:まっすー)の幼馴染みであり、前回のカンボジア訪問に参加して帰国後チャリティーロックフェスを成功させたシンガーソングライターのKOSMIC(=コズミック(以下:KOSMIC))は、大きな荷物とギターを担いで空港に到着した。
【今、空港着きました。Wifi受取りカウンターにいます】
KOSMICからメンバーのLINEに連絡が入る。
すると――。
ミサエ、ほっしー
【ギター忘れるなよ~!!】
ほぼ同時に返信が(笑)
少しして、今回も撮影と取材で同行するこの道中記の筆者でもある事務局 星野大起(以下:ほっしー)とKOSMICが合流。
ほっしー
「今回もよろしく!」
KOSMIC
「二人から同時にLINE来たからびっくりしたよ(笑)大丈夫!今回は忘れてないから」
(※詳しくはカンボジア道中記2を参照)
ほっしー
「お!? 今回はエレキギター?」
KOSMIC
「そうなの。アンプとかマイクとか一式持ってきたよ」
ミサエ
「お待たせしました~!またよろしく(笑)まっすーたち今から上がってくるよ。もう仕事がバタバタで…」
同じくまっすーの幼馴染みであり、KOSMICと一緒に前回のカンボジア訪問に参加して女子生徒たちと交流、KOSMICと開催したチャリティーロックフェスのプロデュースを担当したレンタルドレスショップ「By Magic」を経営する中村美佐江(以下:ミサエ)が、バタバタと言いながらも旅慣れた装いで颯爽と登場。
そして――
まっすー
「あ”~~!! 危なかったぁぁ。マジいきなり道中記にネタ提供するとこだったよ! 駐車場でタイヤ滑ってさぁ、もうあと数センチでぶつかるとこ!あとコレくらい!!」
…と、しっかりネタを提供しつつ(笑)、青い顔して事務局まっすー登場。
なんと今回で5回目のカンボジア訪問である、約1年間で。もはやご近所に行く感覚か?(んなわけないか…)
ほっしー
「よろしくお願いします。田山さん具合悪かったみたいですけど、少しよくなりました?」
たやまん
「いや~ダメです。。もうこのまま死ぬんじゃないかと… (´・ω・) 」
事務局代表 “小悪魔たやまん”こと田山正胤(たやま まさつぐ 以下:たやまん)、多忙すぎてげっそりして登場。
ほっしー
「えーっ!?(いきなりそんなローテンションな…)」
何はともあれ、久々の“やくそくメンバー”集合である。
(※今回、フッキ(福岡)は仕事があり参加できず)
ほっしー
「それにしてもすごい荷物だね」
まっすー
「すごいでしょ!色々あるのよ」
ミサエ
「教室に飾る写真の額もあるしね」
ほっしー
「何ですか、このたくさんあるダンボール?」
たやまん
「学校で配るお菓子です。狩野さんが生徒全員分持ってくぞって」
ほっしー
「あ、そういえば狩野さんは…?」
今回の旅の目的は、8月に完成したバンティアイチャックレイ中学校の新校舎贈呈式の出席である。
「やくそく」プロジェクト発起人である、株式会社マーケットトラスト代表取締役の狩野 富(かのう ゆたか)は、視察では訪れたことがあるものの、生徒たちとの交流はこれが初めて。
いよいよ“ボス登場”である!
たやまん
「もうそろそろ来ると思います」
ミサエ
「何か緊張するね(笑)」
KOSMIC
「チャリティーロックフェスの時もあまり話せなかったしね」
KOSMIC、ミサエ、ほっしーは、狩野と面識はあるが、ゆっくりと会うのは今回が初めてなのである。
狩野 富(以下:ボス)
「あ〜どうも〜」
ボスは、今回の贈呈式での支援に加わってくれる知人の方を伴って現れた。
一同
「よろしくお願いしま〜す!」
ボス
「じゃあコレ(荷物)さ、まず預けちゃおうよ」
そう言ってボスは、大きなカートを自ら押して預け入れ荷物のカウンターに行くと、たくさんあるダンボールを次々と運んであっという間に受付を済ませてしまった。
ボス
「さ、行こ!」
一同
「早っ!」
“行動の人” 狩野 富のすごさを我々はこの旅で何度も目にすることになる。
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荷物を預けた一行は、搭乗までフードコーナーで軽く腹ごしらえ。
まっすー
「また始まるねぇ」
ほっしー
「だねぇ。出来上がった校舎見るの楽しみだな」
バンティアイチャックレイ中学校の新校舎は、出発の約1ヶ月前の2015年8月8日に完成した。 現地から送られてきた写真には真新しいクリーム色の校舎が美しく光っていた。
ほっしー
「ところで、その危なそうな銀のケースは何? ファ、ファントム?」
まっすー
「コレ? ドッロ〜〜ン!(゚∀゚) 贈呈式で飛ばすよ」
ほっしー
「あ〜ドローンか! こんなの飛んだら向こうの人たち腰抜かすね」
まっすー
「でしょ(゚∀゚) でもね、まだ操作が上手くできないの。ちょっと練習しなきゃ」
今回の秘密兵器の一つであるドローン。日本では何かとお騒がせであるが、今回の贈呈式の様子を空撮しようという計画なのである。
ミサエ
「ビール頼んじゃった♥」
まっすー
「もうすっかり飲めるようになったじゃん」
お酒が得意ではないミサエは、前回のカンボジアで飲んだアンコールビールが美味しくて、すっかり飲める人になっていた(笑)
ほっしー
「…でも、搭乗まであんまり時間ないよ」
KOSMIC
「あ、ホントだ!?行かなきゃ」
ミサエ
「えー!ちょ、、待って」
まっすー
「早く飲んじゃって!」
KOSMIC
「一気!」
ほっしー
「グイッと!」
ミサエ
「む、、無理〜!」
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0:20 東京国際空港出発
前回と同じく深夜便で6時間かけてタイのバンコク、3時間の乗り継ぎを経てプノンペンへと向かう。
現地時間 9月7日(月)4:50
バンコク・スワンナプーム国際空港到着
ほっしー
「大丈夫?ミサエさん」
KOSMIC
「飛行機でぐったりしてたよ(笑)」
ミサエ
「ごめん、泥酔だったワタシ、、急いでビール飲んだから」
まっすー
「姐さん、いきなり泥酔!?(笑)」
3時間の乗り継ぎ待ちがあるので、一行は広い空港内を迷いながら朝食がとれる場所を探す。
ボス
「ここにしよう」
日本食を扱っているレストランへと入る。
まだ空いている店内に陣取って、メニューを見る。
寿司、丼などの日本食からタイ料理までなんでもある。
そこへ、一人の日本人が声を掛けてきた。
カリタ
「どうも〜〜」
まっすー
「おぉ!苅ちゃん!来たきた」
たやまん
「お〜お疲れ」
前回の旅にもタイから駆けつけ、遮熱塗料の指導を担当した、株式会社YCF Internationalの苅田征峰さん(かりた まさたか 以下:カリタ)が今回も現地タイから来てくれた。
苅田さんは不思議な人で、いつも現地合流で一番遠くからやってくるのに、さっきまで一緒だったような気にさせる。特に目立とうとせず、静かにサポートにまわる。それでいて経験豊富なのでとても頼りになる男なのである。
ボス
「みんな何がいい? 苅ちゃんも食べな。じゃあとりあえず、ラーメンと餃子と焼き鳥と、、お!ステーキあるじゃん!」
たやまん
「狩野さん、そんな食えないです、、」
ボス
「増田が食うから大丈夫だよ!な!」
まっすー
「は、はい!(さっきカツサンド食っちゃった…)」
ボス
「マンゴーもね」
たやまん
「……。」
こういう時のボスはまるでイタズラな少年のようである。
ボス
「来たぞステーキ!増田、食え! 」
まっすー
「いや、ちょっとさっきカツサンド食っちゃっ、、」
ボス
「出されたものは残さず食わなきゃ♥」
まっすー
「い、いただきま〜す!(マジ食えねぇ…泣)」
さすがボス、小悪魔たやまんのさらに上を行く(笑)。
ボス
「ミーちゃん何飲む?」
ミサエ
「ミーちゃん!?(笑)、さっき泥酔しちゃったんでお茶で…」
女性にはとっても優しいボスであった。
「いや、実はミーちゃんって呼んでくれてちょっと嬉しかったですね。
豪快な話ばかり聞いていたので、もっと怖い人かと(笑)なんかすごい好きになっちゃいました。
ちょっと自分と似ている人だなぁと(ミサエ後日談)」
ボス
「田山がうちに来た時さ、車ひとつでこっち出てきて住むとこなくて会社に住んでたんだよ、増田はうちでITやりたいって言ってて、ITって何やるんだって(笑)」
ボスは創業当時を振り返り、若き日のたやまんやまっすーとの出会いを聞かせてくれた。
その話は冗談を交えながら豪快に笑い飛ばしているが、言葉の端々に仲間への優しさがあり、社長でありながら兄貴的な存在として慕われる理由がすぐにわかった。
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現地時間 9:05 プノンペン国際空港到着
長い道のりを経て、ようやくカンボジアのプノンペン国際空港に到着。
9月は雨季だが、今日のプノンペンは快晴である。
暑い、、3ヶ月ぶりのこの暑さが再びカンボジアにやって来たことを感じさせた。
ミサエ
「また入国審査だ…。前回、指紋取るやつがよくわからなくて舌打ちされたからねアタシ…。怖いよ〜」
前回の入国審査が若干トラウマになっているようである(笑)
先にほっしーが審査を受ける。
ほっしー
「あれ? ミサエさ〜ん!指紋なかったよ〜」
ミサエ
「ほんとだ、しかも超あっさり。何なのよっ!」
どっちにしろお怒りのミサエであった。
ほっしー
「ギター無事?」
KOSMIC
「うん、大丈夫みたいだね。でも今回は荷物が多くて…マイクスタンドまであるから」
ほっしー
「いよいよ本番だもんね。やっとあの歌が聴けるんだ」
KOSMICは今回、チャリティーロックフェスの収益金で購入した物品を届けることと、もうひとつ大事な目的を持っていた。それは前回の旅やチャリティーロックフェスなどを通して生まれたこのプロジェクトのテーマソングともいうべき曲「LIFE IN CAMBODIA」を生徒たちの前で披露すること—。
「本当は贈呈式には参加予定ではなかったんだけど、チャリティーロックフェスが無事に成功して、それから一気に曲ができちゃったんです。「やくそく」プロジェクトのテーマソングを作るというのは、俺と博道(まっすー)や美佐江たちとの“やくそく”だったから。曲ができた以上、行くしかないなと(KOSMIC)」
KOSMIC
「実はまだ歌詞の一部を決めきれていないところがあってね。ちょっと今夜部屋篭もって完成させます」
ほっしー
「楽しみだ!」
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うぉぉぉぉ〜〜〜〜い!!
!?
ボス
「うぉぉぉぉ〜〜〜〜い!!誰かいないの〜」
大声のする方を振り返ると、今回の宿泊先のホテルカウンターに頭を突っ込んで係員を呼んでいるボスの姿が…。
ボス
「うぉぉぉぉ〜〜〜〜い!! ここで間違いないよな、誰もいないんだけど」
まっすー
「うぉぉぉぉ〜〜〜〜い!! 」
なぜか一緒に頭を突っ込むまっすー。
たやまん
「オマエなんかすごい手伝った感出してない?そのドヤ顔」
結局ホテルカウンターに人がおらず、タクシーに乗って直行することに。
荷物も含め、4台のタクシーに分乗してホテルへと向かう。
ほっしー
「うわぁ〜なんか懐かしい! この交通のスレスレ感とか(笑)」
ミサエ
「でも、前回のときとプノンペンのイメージがなんか違う…」
KOSMIC
「オレもそう思った。何だろ? 何か明るいというか活気がある気がする」
ほっしー
「確かに。前回はプノンペンに来た日がどんより曇ってたしね。ホテル前が臭くて陰気な雰囲気だったもんね」
ミサエ
「初日にトゥールスレンだったしね…」
KOSMIC
「ホント、違って見えるなぁ」
ミサエ
「いい雰囲気だよね」
ますます近代化するプノンペンの街は活気に溢れ、大きな建造物が次々と建設されていた。たった3ヶ月しか経っていないのに、全く違う都市を見ているような、自然とワクワクさせる不思議な街だと思った。
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今回の旅は3日間という弾丸ツアーである。
果たして今回はどんなことが待ち受けているのか、贈呈式は準備してきたとおり無事に行えるか?生徒たちはどのように迎えてくれるだろう。
カンボジアの熱気を再び感じながら、ボスをはじめプロジェクトメンバーの表情は一様に、今回の旅への期待と興奮、そして贈呈式に向けた不安と緊張、様々な想いが去来しているように見えた。
<第1話 了>
「今日のクメール語会話(1)」
「クニョーム チョモッ ○○」= 私は○○です。
※日本人の名前は発音しづらいので、
自分で短いニックネームを付けてみましょう。
<次回予告>
3ヶ月ぶりにカンボジアの地に降り立った一行。
活気溢れるプノンペンの街に出て、日本とあまりかわらない日常を過ごしている都会の人々を見て驚かされる。
翌日に控えた贈呈式の成功に向け、夜に行われた関係者の打合せを兼ねた会食では、こっそりと“ある計画”が練られていた—。
カンボジア道中記3 第2話をお楽しみに。