カンボジア道中記
第3話「リアルカンボジア」
<2014年11月24日 カンボジア 2日目>
朝、ホコリにまみれたプノンペンの街を見て、我々は改めてカンボジアに来ているという現実に引き戻された。
増田(以下 まっすー)
「俺ちょっとお腹の調子が悪いかも…」
田山(以下、たやまん)
「え?早くも当たった?でも朝食取っとかないとな」
まっすー
「やっぱさ、他の料理は何が入ってるかわからないから危ないと思うんだよね。
そこで今朝は、前回来た時に狩野さんが発明したコレにするわ!」
そう言って、まっすーが得意げに掲げたのは、、、
まっすー
「サラダを食パンで巻いた「命名! サラダパン(゜∀゜)」
たやまん
「命名って、、まんまじゃん!
しかも狩野さん発明って、、」
まっすー
「サラダってお腹に優しそうじゃない?」
いたって普通のネーミングのパンを満足げに頬張りながら、サラダは生で、かつ洗った時の水がついてるから余計に危ないということに全く気付いていないまっすーであった…。
まっすー
「ウマッ!(゜∀゜)」
たやまん
「調子悪いって言いながら俺の倍食べてるじゃん…。オマエそれは食あたりじゃなくて、ただの食べ過ぎだっつうの」
一抹の不安(?)を抱きながら、昨日のJHPスタッフの迎えでハイエースに乗り込み、一路本日の目的地プレイベン州へ向けて出発。
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8:00 プノンペンを出発
支援候補となっているバンティアイチャックレイ中学校やJHPの建設した学校を視察するため、プノンペンから南東に110km、プレイベン州を目指す。車で約3時間半の道のりだ。
プノンペンから離れると、景色はすぐに一変する。
プノンペンとホーチミンを結ぶ国道一号線。道路の舗装はあったりなかったり。かなり荒れたでこぼこ道を行くことも。
路上には物売りがひしめき、信号もない道路に人と自転車とバイクと車とが砂ぼこりを巻き上げ、絡み合うように進んでいく。バイクが生活の足になっているようで、すごい台数が走っている、二人乗り三人乗りも当たり前だ。
まっすー
「おぉ、すごい道だなぁ。酔いそう、、」
たやまん
「景色がすごく変わってきたね…。あれ何売ってるんですか?
あのペプシの瓶にはいってるの。あっちこっちで見るけど」
JHPスタッフ
「あれはガソリンですよ、そこらじゅうで売られています」
バイクを利用する人が多いカンボジアでは、このように瓶詰めのガソリンがガソリンスタンドよりも安価で売られている。
たやまん
「ガソリン!? 危なっ。瓶詰めで普通に日向に置いてるけど、
気化とかしないのかな…」
まっすー
「純度も怪しいね。だから大丈夫なのかな」
途中、ガソリンスタンドの売店で休憩を入れ、水などを買う。
たやまん
「まっすー、俺コーラ買うけどいる?」
まっすー
「……俺、やめとく」
若干青い顔をしているまっすー。
この時、行く先々でまっすーが最初にするのはトイレの場所の確認であった。
今回が2度目のカンボジアとなるまっすー、しかし前回はプノンペンだけの滞在であり本格的に地方へ行くのはこれが初。反乱をおこしそうな気配のお腹を抱え、終始車中でお利口にしているまっすーであった。
国道1号線を下って約2時間、メコン川にぶつかる。ここからフェリーを利用して対岸へ。
国道1号線は、メコン川流域の経済を支える大動脈「南部経済回廊」の一部であり、この地点は、ベトナムとカンボジアを結ぶ交通の要所であるため、非常に混雑する。長い時にはなんと4、5時間待つこともある。
我々もフェリー待ちの車列に列ぶ。
コンコン! コンコン!
すると、たちまち車の周りにはフェリー待ちの人を相手にたくましく商売する人々の姿が。
飲み物や果物、サングラスなどあらゆるものをこちらに見せながら、車の窓を叩く。
たやまん
「何だかたくさん来たよ、買えって」
まっすー
「あんまり見ちゃダメよ」
その中に混じって、子どもを抱えてアピールし、物乞いをする
母親がいた。
これで生活しているのだろうか? 表現しようのない眼差しをこちらに向けている。
かわいそうだが、ここで一人に施せば、たちまち我も我もと大騒ぎになってしまうだろう。
JHPスタッフ
「もう数ヶ月もすると、むこうに橋が完成しますから、ここもじきになくなるでしょうね」
現在日本の協力を得て、ここに橋の建設が行われている。
ネアックルン橋、日本名つばさ橋。完成予定は2015年の4月。
カンボジア最大級の橋となるらしい。
橋が完成すれば交通は大変便利になり交易も活発になるだろう。
しかしフェリーを利用する人は当然激減する。
そうするとここで生活を営んでるこの人たちはどうなるのだろう?
物乞いをしているこの親子は。
まっすー
「そうすると、ここの人たちは職を失うわけか…」
JHPスタッフ
「そうなりますね…」
昨日、我々はプノンペンの街を見た。
近代的で華やかで、それは間違いなく発展した現在のカンボジアだった。
「支援の必要があるのか?」という想いがよぎったほどだ。
その一方で、首都プノンペンを出ると、荒廃した街で日々の生活もままならない人たちの姿があった。
国が発展していく上で避けることができない貧富の差。カンボジアではそれが極端なまでに広がっていた。
商売ができる人はまだましで、子どもたちはゴミ山を漁り生活の糧を得、小さな子どもを抱えた親は物乞いをする。生活費を得る手段がない、この生活から脱出する術がない。それは発展の陰に隠れた“リアルカンボジア”だった。
かなり待たされた後、ようやくフェリーに乗船。
複雑な思いでフェリー乗り場を後にした。
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フェリーの船上でも物売りをする人たちがたくさんいた。
見たことのない野菜や現地の食材などを売っている。
たやまん
「まっすー、タガメ売ってるよ♥」
まっすー
「いらない」
たやまん
「あ、おいしそうなイナゴ♥」
まっすー
「いらない。 あ、見てるだけで腹が…」
弱ってるまっすーを見て喜ぶ たやまんであった。
<第3話 了>